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パナイ島攻略作戦

リンガエン湾で10日近く停泊した後、今度はパナイ島(フィリッピン中部の国内で3番目に大きい島)攻略の命令を受けて出撃することになった。
この作戦は24駆逐隊に直接命令された作戦だったので、攻略作戦は全て「駆逐隊司令、平井大佐」の指揮下に置かれた。
初めての単独作戦だったので、功を成し遂げんと全員張り切って出撃したものの、
4月16日、海風がイロイロ(パナイ島の行政都市)に入港した時には既に市街に黒煙が立ちのぼっていた。
どうやら敵さんが火を放って逃走したらしく難無く無血占領と言うことで聊かがっかりした。
ここでは2週間近く停泊して敵が敷設した機雷の処分と敵艦船の捜索を行う事になった。
海風は港内で小型船舶1隻(10トン位の遊覧船のような美しい船だった)を拿捕だほし、これに仰々しく「海風占領」と明記した木札を船体に貼り付けて兵員たちが奇声を上げていた。
各艦は、占領確認の名目で陸戦隊を結成して上陸させたものの実はバナナ採りが目的で、バナナ園には小粒の種が一杯入った甘いモンキーバナナが沢山実っていた。
椰子林には至る所に放し飼いの豚の糞や、鶏の卵が転がっており、現地に移住したものと思われる中国人が管理しているらしく竹篭を持って卵拾いをしている。
鶏を掴まえようとして大勢で追っかけ回したが、野生化した鶏はみんな椰子の天辺てっぺんまで舞い上がって、どうしても掴まらない。
大陸戦を経験している水雷長が片言の中国語で渡り合った揚げ句、大きな雌豚を1頭略奪して来た。
後を追っかけてきた飼い主が、「この豚は子供を産ませる豚だから雄豚と替えてくれ」と地べたに漢字を書いてしきりに懇願するが、これには全く目もくれず、「豚はなぶり殺しにした方が美味うまい」と言って暴れ回る豚を内火艇*ないかていに縛り付けて引っ張って帰った。
艦では料理に戸惑った烹炊ほうすい員長が些か不機嫌な様子だったが久し振りに味会う新鮮な豚汁やトンカツにみんなご満悦の舌鼓したつづみだった。
イロイロ港外の機雷掃海にはッターを用意して、機雷を誘爆させる目的で爆雷を放り込み、兵士たちは奇声を上げて浮いた魚を拾い回っている。
ここでは気に掛かる「整列」も全く無く、古参兵たちは戦利品の黒ビールで毎晩ご機嫌の高鼾たかいびきである。
まるで「何処で戦争をしているのか」と思われるような愉快な毎日だった。
こんな楽しい何日かが続くうち、又々嬉しいニュースが舞い込んで来た。


  • 内火艇・・・内燃機付きの連絡用のボート。
  • カッター・・・手漕ぎのボート。 駆逐艦には内火艇と八人漕ぎカッターを夫々2隻を搭載していた。

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