武蔵護衛
5月20日、24駆逐隊は修理中の涼風を残して出港し、2号艦護衛の任務を受けて長崎に回航することになった。
数時間の航海で長崎に入港すると、ここ三菱造船所の岸壁には2号艦がその巨体を横付けしていた。
航海長が、「オイ田邉、手旗でムサシと書いて2号艦を呼べ」と言う。
ちょっと戸惑ったが2号艦の艦名がムサシであることを始めて知り、夢中で「ムサシ・ムサシ」の手旗信号を連送していると、航海長に、「聨合艦隊が武蔵と始めて交信する世紀の瞬間だ、お前は実に運のいい奴だなぁ」と言われた時の感動は今も心に残っている。
その日の午後、24駆逐隊は武蔵を護衛して長崎を出港した。
当時武蔵は未だ聨合艦隊に編入されてはいなかったが、艦名符字は「OL」と決められていたので護衛中は全て「OL」で交信した。
三菱造船所での艤装は全て終わり、呉海軍工厰で兵器調整のため鹿児島周り豊後水道経由で柱島までの公式処女航海だった。
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